スライドターンと聞くと「ああスノーボード初心者の人がやるやつ」と反応する人がほとんどだと思います。
でもでも厳密には少し違うのです。
今回はスノーボードのスライドターンに関して少し深く考えてみましょう。
目次: スノーボードスライドターンを解説
スライドターンとは
文字通りスノーボードをスライドさせつつターンを形成する滑走方法です。
"スライド"とはボードをずらす動作です。
サイドスリップで雪面にエッジを立て停止している状態から徐々にボードを雪面と平行に近づけていくとエッジの支えが無くなりボードの落下が始まります。
これがボートをスライドさせている状態です。
慌てずに再びエッジを立てて行くとスライド(落下)は収まり再び停止します。
このスライド操作を使用してターンを形成する滑走がスライドターンです。
スライドターンの原理
ターンと言うからには回転しながら進行方向を変えなければなりません。
そして回転する為には回転の軸が必要です。
スノーボード上に軸を設定し軸の近辺ではエッジを立て軸から離れたところではボードを寝かせてエッジを外しスライドさせるとボードの回転が始まるのです。
何故前足の上? 竹とんぼやプロペラの回転軸は中心に有るのにスノボードだけ中心では無いのはおかしい、スノーボードも前後対称な形状なのに!
と憤慨する人もいるかも知れません、でもこれには明確な理由が有ります。
それは・・・スノーボードでは1本のボードに2本の足を固定している事。
これは回転どころかしっかりとボードを固定させる状況に他なりません。
スライドターンの方法
では実際にはどの様にしてターンを行うのでしょうか。
順を追って考察してみましょう
先ず斜面を斜滑降で進んでいる状況からスタートします
そこから重心を前足の上に移動させます。前後の割合のイメージは9:1から10:0でも良いぐらい前足の上に乗ります。
側方から見た前足荷重
後方から見た前足荷重
重心移動と同時にスノーボードを寝かせてエッジングを徐々に弱めます。
目線、顔、胸もターンの方向に回して行きます、決して慌てずに
谷に向かって直滑降となると少し怖くなって急いで曲がりたいと無意識に身体を捻ってしまう人も多いですがここは落ち着いて我慢しましょう。
確実にターンするために前足中央に乗っている重心を今度はターンの内側に移動させます。
ヒールサイドならばかかとをしっかり踏みつけます、トゥサイドならば母指球にしっかりと乗り込みます。
これによって回転軸が固定されます。
しっかりと重心移動が出来ていれはそれだけでスノーボードは回転を始めますが同時に目線、顔、胸もまたターン方向に積極的に回してみましょう。
スノーボードの回転が続き反対方向の斜滑降に至ったら重心をスノーボードのセンターに戻しながら徐々にボードを立て始めます。
そう、制動操作、ブレーキングです。
無事ワンターン完了出来ました!
スノーボードが回転する詳細な仕組
先程さらりと 重心移動が出来ていればそれだけでスノーボードは回転を始めます と言ってしまいましたが説明になってませんよね。更に突っ込みます。
スノーボードを良く観察すると滑走面両側に付いているエッジは直線ではありません。
このウエストのくびれはサイドカーブと呼ばれる物でボードを回転させる重要パーツなのです。
サイドカーブがどの様にスノーボードの回転に関わって来るのか順を追って考えてみましょう。
スノーボードが雪の上に平坦に横たわっている状態の断面です。
スノーボードは全体に均等に雪面に食い込みます。
重心が片側のエッジに移動するとそのエッジは雪面に食い込みエッジとサイドウォールは雪と接する事になります。
このサイドウォールとエッジの雪との接触で摩擦抵抗が増し重心を掛けた側の滑りが悪くなることで両サイドのエッジ間に速度差が現れるのです。
更にこの状況を上から観ると
これはもうカービングターンで使用する角付量であり、ずらすのではなく雪面を切ってターンを行う際の使い方です。
やり過ぎにはご注意!
カービングターンの詳細に関しては又改めて投稿したいと思います。
スライドターンの為の身体操作
スライドターン中の身体の使い方もまたカービングターンでの使い方と異なります
先ず前足の上に設定する回転軸は常に鉛直方向に立てておく必要が有ります。
この軸がターンの内側に傾いてしまうとエッジが立ちカービングに移行してしまう為です。
確実にスライドターンを味わうにはこの回転軸を丁寧に操作する必要があります。
次に前足でのヒール、トゥへの重心移動の操作です。
ヒール踵に体重を乗せるってどの様な動作になるでしょう? 多くの人はつま先を持上げてやれば!と考えると思いますが滑走中にこの動作は不安定でよろしくありません。
逆により踵を踏み締める為に膝と股関節を少し曲げて前足の上に体重を乗せます。
後方から見たヒール(踵)荷重
室内でも何処でも簡単に試せるので実際にやってみましょう。
余り関節を曲げ過ぎると先程の回転軸が傾いてしまうので少しだけです。
踵の下に有る物をムギュと踏みつぶす感覚が得られた筈です。
それではトゥサイドはどうでしょう?実はヒールサイドよりも難しいのでは無いかと思います。
トゥに体重を乗せる動作はバレリーナの様な本当のつま先では無くて母指球と呼ばれる親指の付け根に身体を乗せる動作です。
単純な動作ですが実際にやってみるとほぼ全ての人が背伸びの様なつま先立ちになる筈です。
これの何処がダメなの?と考えがちですが良くないのです。
何故ならばスノーボードブーツはソフトブーツと言えどもつま先立ちが出来る程には柔らかく無いからです。
そして仮に柔らかいブーツでつま先立ちが出来たとしてもそれは踵がスノーボードから離れてしまう事を意味します。それはとても不安定な状況なので安心して滑走は出来ません。
後方から見たトゥ荷重
これも何処でも簡単に試せます、足首、膝を曲げれば曲げる程母指球に圧力が加わるのを感じると思います。
簡単な動作なのですが実は人間の日常動作には存在しない動作なのです。この為敢えてやり方を理解してからで無いと出来ないのが普通なのです。
ここで復習
踵に体重を乗せる際には膝と股関節を僅かに曲げる
トゥに体重を乗せる際には足首と膝を僅かに曲げる
です。ちょっと似ているので混同しない様にご注意!
この図はイメージ図です、厳密に考えると実際には足首はブーツが有る為それほど自由度は有りませんし股関節が大腿骨と上体が直線状に成る程広がる事も有りません。
でもこのイメージで自分の身体を動かしてみると解りやすいはずです。
スライドターンの練習方法
やはり緩斜面の練習からをお勧めします。
実際にほ中斜面以上の方がスノーボードはずらしやすいのですがスピードか出る為落ち着いて操作する事が難しくなります。
斜滑降で進み出してターンを始めるタイミングで極端に前足の上に体重を移動!
と同時に上体を谷方向に回します。
あくまでもゆっくりと進んでユッタリと回りましょう。
慌ててクイッと回してしまうととても小さいターンになってしまいます。
小さいターンは悪くは無いのですが小さくしか廻れ無いのは少し不便です。
はじめはユッタリと大きなターン弧で練習し慣れてきたら自分で意識してターンの大きさを小さくする練習方法が結局効率良くスライドターンをマスター出来ると思います。
写真では両腕が少し下がってしまって居ますが、肩から腕に上着の中を物干し竿が貫通している様なイメージで青いラインの様に一直線を保つのが理想です。
このスタイルはよく「イントラ滑りだー!」とからかわれますがカッコ良さを狙う訳でも独自のスタイルを出している訳でもなく本当は実用本位なのです。
肩や上体の向きを僅かな角度一定の速さで回転させる動作もかなり難しくパントマイムや特定のダンス等で訓練を積んだ人で無いといきなりは出来ません。
この動きを補助するために腕で肩のラインを延長してその先の手を回転方向に水平移動させるのです。
肩からの直線ラインを維持する事が出来ていれば格段に楽に正確に上体を廻す事が可能になります。
スライドターンと上級者
昔はバッジテストの種目にもスライドターンが有ったのですが今はもう有りません。
なので一般の人のみならずインストラクターを目指す人でもB級インストラクターを受験する際に初めて必要となり(JSBAの場合)改めて悩んでしまう事が多いです。
本当はインストラクターは日々レッスンでスライドターンを教えて居る筈なのですが…。
それはさておき、ではイントラ関係無ければスライドターンは必要無いのかと言えばそうでは有りません。
練習を積んでカービングが上手くなっても一日中何処でもフルカービングだけで滑走は出来ません。
バーン状況に合わせて適度にボードをずらす滑走が必要になりますがこの時にスライドターンの知識と技術が活きてきます。
カービングで何となくズレてしまうのとずらして滑るのは全く別次元の話なのです。
ターン中にどのタイミングでどれだけズラすのかを瞬時に判断して正確に実行する為にはスライドさせる技術を身に付けている必要が有ります。
何となくの感覚で出来てしまう天才肌の人も存在しますがそんな人をそのまま真似しても上手く行きません。
そもそも天才肌の人でも一度タイミング等が狂ってしまった際に理論を理解していない為になかなか立て直せないケースも多いです。
繰り返しになりますが決してカービングターン中にスライドターンを織り交ぜるとの意味合いでいありません、カービング中に自由自在にボードをズラす為にはスライドの原理と方法を身に着けておくと有利と言う事なのです。
最後に
如何でしょうか。
スライドターンとはどの様な操作で、どんな理屈で曲がっているものか。
頭の片隅にでも置きながら滑走の合間にでも、こんな事かなと試してみて下さい。
きっと滑りの幅を広げる助けになると思います。
スノーボード技術的解説記事はこちらも参考にして下さい!
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