スノーボート用品が高価になる理由を解明 樹脂プレート編

2022年6月3日金曜日

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スノーボード用品が高価になる理由を解明 樹脂製プレート編



要約

 大量生産大量販売が見込めないスノーボード用品では製造方法等を駆使してコストダウンを試みても残念ながら効果が見込めるものではありません。

樹脂製プレート

 前回スノーボードの道具が高価な理由 ~ものづくりの立場から~の記事で解説した金属加工製品の一つ IRON ROCKSスノーボードプレートはアルミニウムの板から削り出して製造する為に価格が上昇する事を解説しました。
 今回はまた別のスノーボード用品として樹脂製プレートの価格を考えてみたいと思います。
 T-plateやRECT DISCなどのプレートは金属では無くプラスチック(樹脂)で作られており製品によって差は有りますが金属製プレートの1/10以下の価格で販売されています。
 これを高いと考えるか否かは個人の裁量ですが実際にどの様な理由でこの価格に落ち着くのか物造りの立場から解説します。
樹脂プレートのRECT DISCの写真


樹脂製品製造方法の分類

 プラスチック製品のプラスチックを製造業界では樹脂と呼びます。
 この樹脂製品の製造方法としては大きく4つに分けられます。
 それぞれの特長と価格に対する影響を見てみましょう。

切削加工

 樹脂の塊から目的の形状を削る事で作り出します。
 加工に多くの時間が必要となり価格が上昇する原因となります。

切削接着

 樹脂製品ならではの加工方法です。
 各部品を切削で作り出しそれを接着剤で接続、固定する方法です。
 削り出す形状を単純化出来るため加工時間は切削加工に比べると少なくなり価格も少しは抑えられます。
 但し接着した部分は削り出す物より強度は低下します。
 この為用途はやや限定された物になります。

3Dプリンター

 皆さんも耳にした事も有ると思いますが最近実用化が進んできた加工方法です。
 込み入った複雑な形状の物でも加工が可能です。
 但しやはり加工には時間が掛かり3Dプリンター自体の制限から使用出来る材料の種類には限定された物になります。。
 通常樹脂製品の場合は強度を重視するのか重量を優先するのか製品の特性に合わせて樹脂を選択する為この制限は結構な障壁となります。

射出成型

 通常世の中に出回っている樹脂製品はこの射出成型と言う技術を使い製造されています。
 金属の"型"に作りたい物の形を削り込み、そこに熱してどろどろに溶かした樹脂を流し込みます。
 樹脂は熱すると溶け冷えると固まる性質を持っています。
 固まったら型から取り出せば製品の完成です。
 簡略化した図で見てみましょう。

1.作りたい物
作りたい物の図

2.作りたい物の形を金型に彫り込む
金型の図

3.金型に溶かした樹脂を充填
樹脂充填の図

4.金型を開いて取り出す
取り出す図

5.作りたい物と同じ形状の製品が完成
製品の図

 製品のサイズや形状に依りますが数十秒程度で成型は完了出来るため非常に安価に製造が可能な方法です。
 今回のテーマの樹脂製プレートも射出成形によって製造されています。
T-Plateの突き出しピンの写真



成型品での価格を左右する最大の要因

 射出成型では型さえ作ってしまえば後はカパカパと量産するだけで数を作れば作る程に原価は"材料費だけ"に近付いて行きます。
 そしてこの「製造数」が販売価格に対しては大きな影響を及ぼすのです。

 原価はおおよそ 初期設備、材料費、加工費を加えた物を製造数で割り算した物になります。
原価 = ( 初期設備費 + 材料費 + 加工費 ) ÷ 製造数

 従って製造数が多くなればなる程単品の原価は下がることになります。
 個々に考えてみると
 材料費に関しては1個あたりに必要な樹脂材料は製造数によってもさほど変化はありません。
 また加工費も1個あたりに必要な時間その物は製造数には依存しません。
 その点初期設備費は初回に一度だけ発生する費用なので生産数が増すに連れて1個あたりの費用は確実に少なくなります。

 そしてこの初期設備は射出成型の場合金型の製作費が主な物となります。
 この金型は想像以上に値が張る高価な物なのです。
 手のひらに収まる程度の小さい製品に使用する金型でも形状の複雑さ等で差は有りますがおよそ500万円は金型の製造に必要です。
 製品が大きければ大きい程それを作る為の金型も大きさが必要になり価格も跳ね上がります。
 金型作成に用いた費用が製品単価にどの程度効いてくる物なのか簡単にみてみましょう。

 金型に500万円必要だった製品を10000台製造販売した場合は一台あたり500円の初期設備費が発生する事になります。
 しかし特殊なスノーボードギアで販売数量が見込め無いので1000台だけ製造した様な場合は一台あたりの初期設備費の負担は5000円にもなります。
 原価 + 利益 + 500円 の販売価格と 原価 + 利益 + 5000円 の販売価格なので比較するまでも無いですよね。


結論 価格を支配する物

 つまり何個製造して販売するのかとの製造数量が原価に大きな影響を与えるのです。
 しかし大量に販売が見込まれる物ならばひたすら大量生産を目指しコストダウンを図る事が出来ますがスノーボード用品の場合はそうは出来ません。

 スノーボードは比較的メジャーなスポーツでは有りますがシーズンスポーツでもある為競技人口はさほど多くありません。
 その人達の中でカービングプレートやラントリプレートを使いたいと考える人達の割合はどの程度でしょうか?
 しかもプレートにも種類やタイプがそれぞれ多く存在し普通はその中の一つ、とても凝った人でも二つ三つ購入するだけです。
 そう考えると個々のプレートを製造出来る数量はそれ程多くは無い事が解ります。
 後は藁をも掴む思いで安価な材料を選択するとか後工程の加工費を極力少なくする等の数々のコストダウン案を実施しても販売価格を下げられる程大きな成果は見込めないのです。

 以上の様な事からの考察でも現在のスノーボードプレートの価格もメーカーが暴利を貪っている訳でも無く適正どころか奉仕に近い物さえ有ることが解ります。

 スノーボードギアをもっと安くいっぱい手に入れたいと思う人(私も含めて)が実践出来る一番確実な方法は自分の周りにスノーボードの楽しさを伝えてスノーボード仲間を増やす事につきます。

 皆で頑張りましょう!!

追記 RECT DISC

 RECT DISCは樹脂プレートなので射出成型かと思い込んで居ました。
 しかし実物をじっくり見てみると何処にもゲートや突き出しピン跡が無くしかも厚み方向の断面がフラットでは無くデコボコしています。
RECT DISC側面の写真
 厳密には積層している様子。
 もしやと思ってくまなく観察すると各部分のラインが異なる方向を向いていて、更に端部の傷んでしまった所が糸状に剥離していました。
 これらの事からRECT DISCはおそらく3Dプリンターで製造されているのだと推測されます。
 3Dプリンターでも既にこれだけの強度の物が実用化されている事は知らなかったので驚きです。
 販売数量の観点やタイプ分けを加味して新しい可能性に踏み出した先頭グループ。
 今後の更なる進化に期待しています。












 こんなふうに何時もスノーボードの事を考えている私ですが
スキルマーケットのCoconalaにスノーボードレッスンを出品しています。
 星5個評価の実績も戴きました! 機会があれば御利用ください。


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