スノーボード滑走と視界の関係を考察 対策としてスノーボード ゴーグルを改良してみます

2023年1月16日月曜日

ゴーゴル スノーボード 技術解説

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スノーボード滑走と視界の関係を考察 対策として スノーボード ゴーグルを改良します

はじめに

 雪の降りしきるバーンで視界が無く転倒を繰り返した箱館山の滑走ですが、同じ事を繰り返していては上達に繋がりません。
 なので視界不良時に転倒してしまう原因を考察して対策を考えてみました。

視界が無いと転倒してしまう理由

 視界が無いと言っても何も見えない訳では有りません。他の人や柱、樹木等は問題なく見えて確認できます。
 しかし雪が積もっていて地面は何処も真っ白、そして吹雪いていて周囲も真っ白、更に空も厚い雪雲で埋り日光も遮られる為薄暗いとなるとバーンの表面のみならずバーン全体がどう傾いているのか等の"バーンの起伏" "斜度変化"も見え難くなってしまいます。
視界不良のバーンの写真
 特に吹雪が酷い時等はもう周りがホワイトアウトしてしまい自身の進行方向に対して何処が水平なのかも把握出来ず平衡感覚を失ったままゲレンデを転がるケースさえ有ります。
 滑走先のバーンの傾きが見えない状況ではボードのエッジを的確にバーンに掛けて行く事は極端に難しくなります。
 この先フラットだと思ったまま落ち込んだ斜面に入ってしまうと多くの場合は重心は後傾気味になってしまいノーズ側のエッジは掛が浅く時には空振りしてしまう事さえ有り得ます。
 スノーボーダーは通常進行方向の先を目視してコース取りやターンサイズを決めているので視界が無くなると滑れなくなるのはある意味当然かもしれません。

 またもう一つ二次的な弊害も発生してしまいます。視界が悪いと恐怖心からどうしても自分の直ぐ足元を注視してしまいます。
 この足元を見る動作で滑走中に頭が下がってしまうのですが、この動作によって滑走中の重心がトゥ側に偏ります。
 つまり重心がずれてしまう余り嬉しくない状況、まるでスノーボードを始めたばかりで恐怖心と戦いながら滑っていた頃と同じ様な状況に陥ってしまいます。

"足裏感覚で滑れ!"は有効なのか?

 良くスクールや上手い人に教えて貰っていると視界が悪い時には足裏感覚で雪面を感じながら滑走するんだ! と言われます。
 教えて貰った瞬間はあーなるほど!と感心するのですがやはり万全では無く足裏感覚を全力で感じながらの滑走でも転倒してしまう事が多々有ります。
視界不良時のスノーボード滑走の写真
 でもこれには明確な理由が有ります。
 情報を取得すると言う意味合いでは取得可能なタイミングが視覚情報に比べて足裏感覚は物理的に遅いのです。
 通常滑走時は進行方向の前方を目視します、ターンの際にはターンする方向を目視しますがその際に滑走している地点から先行して滑走先の斜度や雪表面状況を無意識のうちに読み取っています。
 これに対して足裏感覚で得る事が出来るのはまさにその瞬間スノーボードが接している雪面の状況のみです。その後どう変化するのかまでは解り得ません。
 この為バーンが急に落ち込んでいたり傾いていたりしても予測しようが無くバランスを崩す事となります。
 勿論、足裏感覚から目で見えていなくてもツルツルのアイスバーンなのか荒れてボコボコのバーンなのか、はたまたカミカミの圧雪バーンなのか等の情報は得る事が出来てそれに対応したエッジング操作を行う事は可能です。
 でも本当に視界が無い時には足裏感覚だけでは滑走に十分な情報を得る事が出来ないと言う事なのです。

根本的な解決方法

 長々と視界が悪いと点灯する理由を述べてきましたが、ではそもそも何故視界が悪いのかを考えてみます。
 原因は明確で
 1.天候が悪い
 2.ゴーグルの影響
のふたつです。
 天候はどうにもなりませんがゴーグルの影響は自分のアイテムなので対策の取り用もあり得ます。
 さて、更にゴーグルの影響で視界が悪くなる原因を考えてみると
 1.レンズの曇り
 2.レンズが暗い
の2つが考えられます。
 それぞれの対策方法を考えてみましょう

ゴーグルのレンズが曇る原因と対策

 ゴーグルのレンズが曇ってしまうのはスノーボーダーあるある と言うより永遠の課題です。
 これまでにも色々なメーカーや人が対策案や対策製品を作り出しています。
 さてさて理系解説なのでくどい様ですがここでレンズが曇る原理の説明です。
 先ず滑走時の運動で汗をかいてしまいゴーグル内側の湿度が高くなる。又は転倒や降雪等でレンズの内側に雪が入ってしまったまま使い続け雪が溶けてゴーグル内側の湿度が高くなる事が第一要因です。
 そして外気温が低いとゴーグルのレンズも冷されて行きます。
 レンズが冷えてしまうとその内側で先程の高湿度の空気とレンズが接する部分で水蒸気が再び液化(結露)して極々小さな水滴となってレンズの内側に付着します。
 この小さな水滴の集まりがレンズの曇りです。

 原因が解ればそれに対する対策も考え易く成って来ますね。
 パート毎に見ていくと

レンズを冷やさない対策

 割りと値段の高めのゴーグルに良く使用されているダブルレンズ、ゴーグル自体が二枚重ねの構造に成って居る物です。
 この構造だとレンズの間に断熱層を形成するため内側のレンズが冷え難くなります。
 しかしながら通常ダブルレンズの断熱層はただの空気である為熱遮断効果は限定的です。
 可視光を透過させる必要性から熱伝導率の低い素材でも不透明体は使用出来ない事がネックになります。
 ダブルレンズの間を完全に密閉して空気を抜き真空に出来れば劇的な効果が期待出来るのですが現在の樹脂成型の技術での製品化は未だ難しい様です。
 余談ですが気温が異常に低い場合このダブルレンズの間が曇ってしまう事も有ります。
 昔ニセコのナイターで滑っていて気温は-20℃、私の道具の限界を超えていました。
 異様に視界が悪いなと思って明るいところで確かめてみるとタブルレンズの内側に氷が張っていました。。。
 こうなるともうどうにも出来ません。
 先程ダブルレンズの間の空間は普通の空気と書きましたが、用意周到な人などは低温が予想される前にはゴーグルをシリカゲル等の乾燥剤の塊と一緒にジップロックの袋に入れて数日間強制乾燥させるそうです。
 これはゴーグル自体を乾かしている訳では無くて時間をかけてレンズ間の空気層の湿度ほ下げる事が目的です。
 とことん追求する人達の探究心には頭が下がります。

メガネ用曇り止めでの対策

 割りと思いつきやすい対策ですがメガネ用の曇り止めグッズを流用する方法です。
 スプレータイプ、液体タイプ、ウエットティシュタイプと様々な形態のものが販売されています。
 取扱説明書の指示通りにレンズの内側に塗布するとそれなりの効果は有ります。
 ただし効果の持続時間は長くありません。
 日常生活での周囲湿度とゲレンデ等の雪上での湿度との差が大きいことに拠るものだと考えられますがある程度の時間が経過すると曇り止め自体が流されてしまい効果は停止します。
 また事項で解説しますが独自のコーテイングが施されているレンズへの使用は厳禁です薬剤及び塗布作業の摩擦でせっかくのレンズのコーティングが損傷してしまう為です。
 ネガネ用曇り止め剤を流用する際にはシンプルなレンズ限定もしくは使い古してコーティングの効果がなくなってしまったようなレンズの延命策としてのみ行うべきかもしれません。

コーティングでの対策

 曇らない、曇りにくいレンズとして販売されている物にアンチフォグコーティングが施されているレンズがあります。
 レンズが冷え表面で結露した際に水滴になる前にレンズ表面で馴染ませて流れ出させることにより曇りを回避したものです。
 結構解りやすく効果が認められますが、極端に湿気が多い…雪が溶けたり雨等でゴーグルのスポンジが濡れている様な状況では結露を抑え切れない場合もあります。
 またこのコーティングは物理的な力にはとても弱い物です。
 ゴーグルが曇ったから汚れたからとティッシュやハンカチで拭き取ってしまうとそれだけでもうコーティングも拭き取られてしまい効力を失ってしまいます。
 取り扱いには細心の注意が必要です。

換気での対策

 ゴーグル内側の湿度が高くなる事が原因なのであれば湿度を下げてやれば良いとの考えがこの方法です。
 曇ってしまうゴーグルでも滑走が終わってリフトに乗る際にはゴーグルを額に上げて顔面との密着から解放させると曇りにくくなるのは皆さん経験的に知っている換気方法ですね。
 元々普通のゴーグルでも換気の効果を狙ってレンズ際の上下に換気用の薄いスポンジの部分が設定されていますが十分に機能しているとは言い難いです。
 幾つかのメーカーではゴーグルに"小さなファン"すなわち換気扇を装備したものを販売していました。
 電動ファンで強制的に換気させる目的です。
 私もSWANS製の物を購入して使用しましたが実際のゲレンデでは換気能力が十分に発揮出来ているとは言い難くレンズは曇る事の方が多かった事が記憶に残っています。
 そして数年前に山本光学からBANKやHIGH ROLLER等に画期的な換気機構が搭載されました。
 レンズの横にレバーが有りワンタッチ操作でフレームとレンズの間に隙間を作れるのです。
Bankの換気システムの写真
 ゴーグルを装着したままで換気が出来るのでヘルメット着用時にも抵抗無く使えます。
 レンズ際の上下に完全に何もない空間が出来る為確実に換気が行われます。
Bank上部換気スペースの写真
Bank下部換気スペースの写真
 現在ではこの種のゴーグルが最も曇り対策としては有効ではないかと思います。

ゴーグルのレンズが暗い対策

 そもそもゴーグルに使用されるレンズの目的は
物理的な眼球の保護
眩しすぎる光からの保護
の二つです。

 物理的な眼球の保護とは雪、氷の粒、その他の異物から眼球を守るための物です。
 滑走中はそこそこの速度で移動している為スノーボードなどの足回りで色々なものが弾け飛びます。
 その弾け飛んだものが目に当たってしまうと最悪失明等の大怪我に繋がりかねません。
 その為目の周囲をシールドする機構が必要となりますがそれがゴーゴルなのです。
 
 光からの保護とは
 積雪で一面の銀世界となったゲレンデでは晴天の場合、太陽光があらゆる所で反射し眩しくてまともに眼を開けて居られません。
 この眩しすぎる光対策でレンズである程度透過する可視光を制限して視界を守って居るのです。
 *実際に眼に有害な紫外線をカットする機能も有りますが視界とは直接関係有りませんので今回は割愛します。
 従ってゴーグルのレンズは明るい場所を暗く観る様に作られている為、暗い場所で使用すると更に暗くなるのは極めて当然と言えば当然の事なのです。
 そうなると対策は明確でスノーボード滑走時には周囲の明るさに合わせたレンズを選択すると良い事になります。

 では レンズの選択は何を目処に行えば良いのでしょうか。
 ゴーグル、レンズにはカタログ若しくは取扱説明書に"可視光透過率"と呼ばれる値が記載されています。
 この可視光透過率とは目に見える光(可視光)の内の何%の光を透過させるのかを示す値です。
 つまり
可視光透過率50%ならば半分の明るさ
可視光透過率が0%ならば真っ黒で何も見えない(実際には存在しないレンズですね)
可視光透過率が100%ならばレンズが無い裸眼と同じ明るさ
と数値が上がる程明るいレンズと言う事になります。
 ゴーグル個体に依存しますが標準的には30%~50%辺りのものが多く使われています。
 従って、天気の良い明るい日には可視光透過率の低め(数値の小さい)のレンズを使用し天候が良くない暗い日には可視光透過率が高め(数値の大きい)レンズを使用する事で対策がとれる訳です。

 因みに私も使用しているゴーグル 山本光学のBankには調光レンズと呼ばれる周囲の明るさに合わせてレンズの可視光透過率が自動で変化するタイプも存在します。
 変化の幅は型式に依りますが最も大きい物で15-55%と結構な領域をカバーしてくれます。
 しかし私が使用しているタイプでは17-35%とかなり暗めの領域で変化するタイプなので今回の曇天をカバーできなかったのです。

対策例としてのレンズ交換

 Bankの場合比較的レンズ交換も容易な為今後の曇天に備えて思い切り明るいレンズをスペアとして購入しました。
 名称も"CLR"で可視光透過率は81%です。
 
 購入した実物がこちら
BankスペアレンズCLRの写真
 難しく考えずに只開封して取り替えます。
 交換前のレンズを装着している様子がこちら
Bankの調光レンズ時の写真
 そして交換後のクリアレンズ装着している様子がこちら
BankスペアレンズCLR交換時の写真
 レンズを通した床の部分を比べるとかなり違いが出ていますよね。
 期待大です。

交換レンズ購入時の裏技?

 おまけの情報です。
 スノーボードギアに関わらず良いものは高い!と言う事でゴーグルのスペアレンズも結構な価格です。下手をすると新品のゴーグルが買えるぐらい・・・。
 余り需要の多くないジャンルの製品の更に交換用部品なので割高になるのもやむなしかと思います。
 しかし運が良ければ少しだけ安価に入手できる可能性も有ります。
 それは"別ブランド"の交換レンズを流用する方法です。

 どういう事かと言えば例えば山本光学の場合トップブランドはDICEです。
 今回例として使用したゴーグルBankはDICEブランドですが山本光学の場合これとは別にSWANSブランドも存在します。
 そしてSWANSにはRIDGELINEと呼ばれるゴーグルが有りBankとRIDGELINEはほぼ同一の製品です。
 従ってBankにREDGELINEの交換レンズを使用する事が出来ますし逆にRIDGELINEにBankの交換レンズを使用する事も問題無く可能です。
 これは今に始まった事でも無く以前流行ったDICEのFATFIVEとSWANSのC2Nにも互換性がありました。
 この様にブランド違いをうまく活用すると購入時の選択幅が広がり運が良ければ割安で購入出来る事も有ります。

 ただしこのブランド違いにへの挑戦はあくまで自己責任でじっくり確認を行ってからにしましょう。
 当ブログは挑戦した結果への一切の責任、保証は行いませんので御了承願います。

おわりに

 如何でしょうか、実はこのブログにこれまでに未だスノーボードゴーグルに関しての解説は書いていませんでした。
 書き始めると解説したいネタが出るは出るはでかなりの長文となりました、申し訳ありません。
 実はまだまだネタは残っているので又別記事でゴーグル解説2を行いたいと思います。

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